ラムリーザ・サーガ フォレストピア創造記

The Ramlyza Saga – Forestpia Chronicle


降竜祭打ち合わせ ~けむりだま再び~

帝国暦九十三年 静寂の月・旅人の日(現代暦:十二月上旬)

 この時期になると、南国で温暖な帝国でも少しばかり肌寒い季節となる。しかし、異常気象の発生した去年のようなことでもないかぎり、雪が降ることはまずない。

 降竜祭が行われるのは、そんな肌寒い季節である。

 

 放課後、空いている教室にて――

 降竜祭実行委員は、そこに集まっていた。生徒会メンバーだけでは足りないということで、各クラスから二名ずつ集めて、結構な大所帯となっていた。

 最初は生徒会室で行う予定であったが、この人数では生徒会室がいっぱいになってしまう。そこで、使っていない教室を借りたのだ。

 委員長は生徒会長のユグドラシルがそのまま兼任。そのメンバーには、ラムリーザのクラスから選出されたジャンやリリスも加わっている。

 ジャンはこういった場にも慣れている様子だが、リリスはやはり少し落ち着かない。

 文化祭と違って、クラスの出し物というわけではなく、学校全体で催す一つのお祭りという意味合いが強い。夏休み前に行った、ミルキーウェイ・フェスティバルの冬版といったところだろう。

「えー、諸君。予定通り話はついたよ」

 壇上に立ったユグドラシルは、誇らしそうに一同を見渡して言った。そして教卓の上に、直径二センチぐらいの小さな玉を置いた。玉から一本の紐が伸びている。

「フォレストピアの花火職人が協力してくれることとなったよ。降竜祭のメインイベントは打ち上げ花火。楽しみに――いや、我々は運営する側。生徒たちを存分に楽しませようではないかっ」

「竜神が降臨される祭りなのに、なぜ打ち上げにするのですかー?」

 実行委員の中から質問が飛ぶ。たしかに「降りる」と「打ち上げる」では、意味も方向も反対である。

「ふっふっ、それはどうかな」

 ユグドラシルは答えず、代わりに不敵な笑みを浮かべた。

 

 降竜祭について本格的な打ち合わせを行うのは、今日が初めてだった。

 後期中間試験前の会合では、顔合わせ、自己紹介程度しかやっていない。まずは、ユグドラシルの構想が実現可能かどうかを調べておく。それが前回の会合のときの課題となっていた。

 そこで先日のフォレストピア首脳陣パーティーである。

 ユグドラシルは、学校イベントのネタ探し目的で、そのパーティーに潜り込んでいた。

 彼自身はフォレストピアの住民ではないが、妹のロザリーンが、ラムリーザの参謀補佐として住民ではないながら参加している。ユグドラシルもそのつてで参加している。ぶっちゃけて言えば、ラムリーザとの縁を最大限に利用しているだけだ。

 そのパーティーで、参加していたゴジリに声をかけていた。ゴジリは表向きには格闘ジムの経営者だが、もう一つの顔として花火職人でもあった。

 夏休み最後のイベントでは、その技術を駆使して打ち上げ花火大会を成功させている。今回も、その腕を見込んで協力を依頼したのである。

 もしもゴジリとの打ち合わせが失敗に終われば、今日改めて一から方針を話し合うことになっていた。幸いゴジリは協力してくれることとなり、土産までいただけたのだから万々歳だ。

「その玉は何ですか?」

 再び、教卓の上の小さな玉について質問が飛んだ。

「花火職人さんから土産にいただいたものさ。小さな花火だから室内でも大丈夫と言っていたよ。会議の終わりに、景気よく一発パンとやって締めよう。あとリリスくん、起きようね」

 ジャンはハッとして隣を見る。リリスは机に突っ伏して寝ていたので、突いて起こす。リリスは手持ち無沙汰だったので、とりあえずいつものように寝ていただけだ。

 休み時間など、ソニアやユコと絡まないときは、いつもそんな感じである。ちなみに、ユコと出会う前はもっと頻繁にこんな調子だったそうだが、今は関係ない。

 しかし、室内で花火をするのは、本当は禁じられている危ない行為だ。ゴジリは当然それを知っているはずなのに、あえて自作の花火を持たせたわけだ。室内でも扱える小さなものなのか?

 もしもこの場にラムリーザ、ソニア、ソフィリータ、ミーシャの誰かがいたら、その玉を使うことは止めたはずである。しかしこの場には、花火そのものを見るのが初めてという者が、ほとんどである。その玉の正体は、実は――

「それではまずは、降竜祭の日程を決めます。年に一度竜神テフラウィリスが地上に降臨されるという設定は経典にありますが、それがいつであるかは明言されていません。自分たちの考えた日が経典に組み込まれる見込みはないけど、とりあえずは日にちを決めなければ話は進みません。何か意見はありますか?」

 ユグドラシルはそこまで語ると、集まったメンバーを見渡した。

「今年中にやりますか?」

 最初の質問に、ユグドラシルは「そのほうが良いでしょう」と答えた。来年になると、生徒会の代替わりがある。ユグドラシルが生徒会長として祭りを主導できるのは、実質今年中というわけだ。

「冬休みに生徒を登校させるようにしたら、めんどくさがり屋が休むと思います」

 次に挙がった意見も取り入れられた。そうなると、準備期間は残り二十日ほどしかない。

「あまり日数がないね、今年の終業式が終わったあとにやりますか?」

 冬休みは神帰の月・賢者の日から。そして終業式は、その前日である月影の日だ。

「何か他の祭日と重なってないか?」

 話し合いとなり、教室はザワザワとしている。

「特にないようですね。それでは終業式は午前中で終わるので、その日の午後から祭りを始める。特に反対はありませんか?」

 ユグドラシルは出てきた意見をまとめて、再び周囲を見渡す。

「その日はソニアの誕生日。そんな日を祭りの日にしたら、あの娘絶対に図に乗るわ」

 リリスが初めて口にした意見は、ソニアに対するネガティブな意見だった。

「そんなこと、どうでもいいよ」

 ユグドラシルの言うとおり、確かにどうでもよい。

「なんか『あたしが竜神よ』って言いそう」

 リリスはジャンにぼそっとつぶやいた。

「勝手に図に乗せておけ。また去年の誕生日のときみたいに馬鹿騒ぎして、周りから奇異の目で見られるだけだ」

「それもそうね、馬鹿になるだけだわ」

 特に反対意見も出なかったので、降竜祭の日は神帰の月・賢者の日に決まった。

 一年に一度、竜神が降臨する日。少なくとも学校で祝う降竜祭の日取りが、この瞬間に決まった。

「では次に、祭りの内容に移るぞ。今回は文化祭と違って、クラス単位の出し物はなし。その代わり、フォレストピアの人たちが出店してくれることが決まったよ」

「それでは、自分たちの仕事は何ですか?」

「主に前準備。露店の設置、会場の飾り付け。あとは当日の司会進行などを担当することとなるんだ」

「ほとんど裏方なんだね」

「そうなってしまうが、よろしく頼むよ」

 それから、どんなイベントを実施するのかについて、意見を述べ合った。

 この日決まった主なイベントは、運動場にステージを作って、竜巫女コンテストなるものを実施すること。簡単に言えば、美女コンテストの類である。竜巫女には独特の衣装もあるので、祭りの目玉イベントとなるだろう。

「ダンスパーティーとかもやりますか?」

「音楽かぁ……」

 ユグドラシルは少し考えてから言った。

「ジャン君とリリス君、ここも文化祭のときのようにラムリーズの生演奏でよろしく頼むよ。――ってか、そのつもりですでにラムリーザ君に話してあるんだった」

「了解したっ」と、ジャン。

「ソニアの誕生日に、ステージで演奏。また狂喜乱舞の不思議な踊りが見られるのね、くすっ」とリリス。

「花束も用意しといてやるか」

「それも結局バラバラにされるけどね」

 ジャンとリリスの二人は、去年の神帰の月・賢者の日の夜、受け取った花束が原形をとどめなくなるまで、振り回し続けて踊ったソニアの姿を思い出して、顔を見合わせてくすっと笑うのであった。

 

「ふえぇっくし、ふえぇっくし、――ふえぇっくしょん!」

「なっ、何だよ突然!」

 ラムリーザは帰宅の途中、一緒にいたソニアが急にくしゃみを三連発でぶっ放したのでびっくりする。

「何か変! 誰かがあたしの噂してる!」

「知らんがな。そんなことよりも、小分けにして三回もやらずに一回で済ませたらいいのに」

「三回出ちゃうんだからしょうがないじゃない!」

 ジャンとリリスが降竜祭実行委員として活動している間、部活は自然と休止傾向になる。

 ユコはレフトールとゲームセンターに行くことが多かったが、昨日も今日も、学校が終わると一人でさっさと帰ってしまっていた。

 リゲルとロザリーンは、軽音楽部がないときは天文部に行っている。後輩組のソフィリータとミーシャは、部活がない日はビデオカメラ片手にどこかへ旅立ってしまう。

 ラムリーザとソニアの二人は、ポッターズ・ブラフの田舎道を歩き、駅へと向かっていた。いつもの光景である。

「そうだな、今日は何か買ってあげようかな」

 ラムリーザは、時々ソニアにちょっとしたものを買ってあげている。たいていは飴の入った缶とか、たわいないものではあったが、時々は本物の宝石の指輪などを買ってプレゼントしている。

「チョコレートが欲しい」

「それはリゲルに頼め。そうだなぁ、ハッカ飴を買ってあげようか?」

 これはラムリーザのいたずらだ。以前買ってやったアクマ式ドロップスは、さまざまな味をした飴が入っているものだが、その中にハッカ飴も入っていて、ソニアはたいそう嫌っていた。

「そんな歯磨き粉飴要らない! ココちゃんが欲しい!」

「なんでだよ、すでにたくさん持っているじゃないか」

「足りない!!」

 ラムリーザは唖然として、次の言葉が出てこない。先日ごんにゃへ無理やり連れて行かれ、めでたく十九個目のぬいぐるみ――ではなく、クッションを手に入れたばかりである。

 こんなに同じものを集めて、どうしようというのだ? ユコはさらに所持しているというから、まるで理解できない。それでいて足りないというのは、いよいよ意味不明。

「あっ! ごんにゃに行きたい!」

 ラムリーザにとっては藪蛇であった。昨日は何も言わなかったのに、「何か買ってあげる」と余計なことを言ったために、ソニアはごんにゃで実施されているコラボを思い出してしまった。

 その結果、ラムリーザは汽車を待つ間も、汽車に乗っている間も、フォレストピアの駅を出るまで、ソニアの「ごんにゃ行きたい」という攻撃にさらされ続け、説得などできるはずもなかったのである。

 理屈を並べて、同じクッションを集め続ける無意味さを説いても、「わかった、だからごんにゃに行きたい」と答えられて、まったく話が通じない。

 結局、久しぶりに学校帰りにごんにゃに立ち寄ることとなってしまったのである。

 

「いらっしゃい!」

 店に入り、店主のいつもの挨拶を浴びる。そこでラムリーザは、見慣れた人物がカウンター席にいるのに気がついた。

「あっ、呪いの人形が来てる!」

 ソニアも気がついたようだ。ユコはそこで、真っ赤なカレーリョーメンを、これまた真っ赤な顔で、額に汗を浮かべながら食べていた。彼女の目的も、ラムリーザにはすぐに分かっていた。

 ソニアがユコの隣に座り、ラムリーザもそれに続く。カウンター席に三人が並んだ。そういえば、以前のココちゃんカレー騒動のときも、ラムリーザがソニアに引っ張られて学校帰りにカレー屋に入ると、すでにユコがいたということが何度かあった記憶がある。逆に二人が食べているところに、ユコが現れることもあった。

「なんにしようか?」

「あたしマグマリョーメン!」

「つけるぶんで……」

 元気よく注文するソニアと、すべてを諦めきったかのように注文するラムリーザが対照的だ。

「マグマリョーメンは、ほとんど観光客が記念にしか注文しないね。住民で注文してくれるのは、ほとんどお嬢さん二人くらいだよ」

「辛いのが好きなのだよ。こいつら味覚障害だからね」

 激辛リョーメンを必死で食べていて答えない二人に代わって、ラムリーザは適当に答えておいた。辛いものばかり食べていると味覚が鈍る、なんて話を聞いたことがあった。

 しかしラムリーザの皮肉も、激辛リョーメンと格闘している二人には、反論する余裕はなかった。

 ココちゃんについては、一言も漏らさない。これで二十個目のココちゃんだと言えば、変な目で見られること間違いなしというものだ。

 辛さのせいで牛歩戦術のように箸が進まない二人をよそに、ラムリーザはさっさと食べ終わって店内を見回す。そして棚の上に、厄介で忌まわしきものを発見したのだ。

 そこにはココちゃんぷにぷにクッションが、まるで御神体のように恭しく飾られていた。それを見たラムリーザは、思わずため息をつく。

 念のため言っておくが、別にココちゃんは何も悪いことをしていない。問題なのは、ソニアが大量に集めたうえ、自分の部屋ではなくラムリーザの部屋へ散らかすことだ。だから厄介であり、忌まわしいのだ。

 ようやく食べ終わった二人も、店内に飾られている御神体に気がついた。すると、とたんに不満そうな顔になる。なんでだ?

「クッションなのに……」

 ソニアが機嫌の悪そうなつぶやきを漏らす。

「飾られクッション」

 ユコも、トーンの低い声で言い放つ。

「何が不満なんだよ?」

 ラムリーザには、女の子が突然不機嫌になる理由がよく分からないことがある。

 もっとも、ラムリーザの周りにいる娘たちは、感情を表に出しがちだからわかりやすい。リリスですら、ああ見えて感情は案外顔に出る。しっかりと日々付き合っていれば、わかりやすいものだ。

「クッションなのに……」

 ソニアは再び同じ言葉をつぶやく。

「クッションだったら何だよ?」

 ラムリーザがめんどくさそうに問うと、ソニアはまるで睨みつけるかのようにキッとした視線をラムリーザに向けた。

「ココちゃんはクッションだから、飾られているのはおかしい。ぬいぐるみを大事に飾るのはわかるけど、クッションを飾るのはおかしい。クッションはクッションらしく下に敷かれるべきなの!」

 出た。ソニアのクッション理論。その理論はラムリーザの部屋でも生きていて、ベッドに飾ろうとしたり、整然と並べようとしたら先ほどの台詞を放って怒ってくるのだ。

「飾られクッションなんて許せないですの。クッションらしくしろですの」

 再びユコも同じことをつぶやく。たぶんユコも、ソニアと同じクッション理論を持っているに違いない。

 その後は食事後の雑談。ソニアとユコの二人は、ココちゃんについていろいろと話し合いをしている。「クッション規則、ココちゃんエキスパンション」なるものについて、まったく意味のない規則を作り上げようとしていた。

「第一条、ココちゃんはぬいぐるみじゃなくてクッションなのだから、常にクッションらしく振る舞うことを要求する」

 ラムリーザは、その後はもう聞いていなかった。今日のを合わせると二十体に増えるクッションの扱いについて、頭を悩ませているだけなのだ。

 

 場面は戻って、降竜祭実行委員の集まる教室。

 大まかな祭の流れは決まり、最後に小型花火を披露してから解散、ということになった。

「さあさあ皆さん、御照覧あれ」

 ユグドラシルは、教卓の真ん中に大きめのビー玉ほどの玉を置いた。もちろんその前に、教卓の脇へ水を張ったバケツを置いておく。

「本当に室内で大丈夫なんですか?」

 誰かが不安そうに尋ねた。

「小型だから大丈夫だと聞いている。もちろん、念のため水も用意してある」

 ユグドラシルはそう言って、教卓の脇に置いたバケツを指さした。花火を扱うときは、すぐそばに十分な水を用意しておくこと。これがゴジリから聞いた注意点の一つであった。

 続いて懐からマッチ箱を取り出す。こんなものを学校に持ち込んだら没収対象だが、ユグドラシルが持ってきたものではなく、学校の備品を借りたものであった。

「おっと待った、あんまり近寄るな」

 教卓の近くに集まってくる生徒を、ユグドラシルは片手で制してから、玉から伸びた紐状の導火線に火をつけた。シュルシュルという音を立てて、小さな火花が導火線に沿って進んでいく。火花が玉へ近づくにつれて、周囲の生徒たちは期待に身を乗り出していった。

 ぼふっ――

 花火は火花を散らすことも、火を噴き上げることも、爆発することもなかった。

 くぐもった音がしたような気がしただけで、次の瞬間、玉の頂点部からモクモクと煙が吹き出し始めた。

「なっ、なんだ? 不発弾か?」

 ユグドラシルは火を消そうと考えたが、そもそも火はついてない。この時点で玉を水の張ったバケツへ放り込んでいれば、被害はなかっただろう。

 煙はどんどん激しく噴き出してくる。その煙は天井まで到達し、お互いの顔も見えづらくなっていた。
              
降竜祭実行委員会の教室で、教卓のけむりだまから大量の白煙が噴き出し、生徒たちが咳き込みながら窓を開けようとする場面
「これ、やばくないか?」

 誰かがそう言ったときは、すでに遅かった。教室は煙で満たされ、目の前は真っ白になってしまっていた。

「げほっ! ごほっ!」

「なっ、なんだこれは?!」

 すぐに教室内は大パニックとなる。少し寒くなってきた時期だけに、窓をすべて閉めていたことも事態を悪化させた。

 数分後、廊下へ漏れ出した煙に気づいた生徒が教室の扉を開けた。すると煙の一部が廊下へ流れ出し、そのおかげで教室内も多少はましになり、その隙に窓際にいた生徒が窓を開けた。

 ゴジリ開発のジョークグッズ「けむりだま」による、二度目のいたずら大成功であった。

 

 そろそろ日が落ちそうな夕暮れの田舎道。

 ジャンとリリスは、会議が終わったあと、二人で帰っていた。ジャンの「一緒に帰ろう」との台詞に、リリスは「友達に噂されると恥ずかしい」とは答えなかったのだ。

 逆にリリスに対して、「ジャンと帰るなんて生意気」という声も上がるだろう。主にソニアあたりから。

「いやもう、ひどい目に遭ったな」

「あれも花火なのかしら?」

 リリスは、煙が染みついた制服の袖を嗅ぎながら顔をしかめている。

「どこが『火』だよ。あれだとただの『煙』じゃんか。後でゴジリを問い詰めておくさ」

「それじゃあ、またね」

 ポッターズ・ブラフの駅前で二人は別れる。リリスはまだジャンのホテルには泊まらず、実家に戻っていた。

 ジャンは、リリスの後ろ姿が角に消えるまで見つめてから駅へと入って行った。

 

 いずれは俺の元に戻してみせるさ――今はただ、そう思っていた。

 降竜祭の準備は、まだ始まったばかりである。

 本番の打ち上げ花火より先に、教室は煙で真っ白になったが、その煙の向こうに、ジャンには少しだけ先の景色が見えているような気がした。

 

 ココちゃん所持数――ソニア二十個、ユコ二十八個。