ラムリーザ・サーガ フォレストピア創造記
The Ramlyza Saga – Forestpia Chronicle
騎馬戦前編 ラムリーザ無双
帝国暦九十三年 播種の月・王の日(現代暦:十一月上旬)
ラムリーザが今年の体育祭で、最初に参加する競技は騎馬戦である。
四人の馬役が騎手を支え、その上に乗った一人が相手の騎馬と戦う。相手の騎馬を崩すか、騎手のハチマキを奪えば勝ちとなり、敗れた騎馬は退場となる。また、騎馬が決められた枠の外へ出た場合や、騎手が落馬した場合も負けとなる。
そして、クラス対抗の個人戦、勝ち抜き戦、乱戦という三種目が行われることになっている。一学年だけでは騎馬の数が少ないため、同じ組番号の一年生、二年生、三年生をまとめ、一つのグループとしていた。例えば一組なら、一年一組、二年一組、三年一組が同じ陣営になるといった具合だ。
「ラムーっ、がんばれーっ」
ソニアの大声がグラウンドに響き渡る。
この競技には男子しか出ないので、女子は応援に回っている。女子は騎馬戦の代わりに創作ダンスがあり、一部の男子生徒は、それを妙に楽しみにしているようだが、深くは考えないでおく。
ちなみに騎馬戦は、レフトールお気に入りの競技である。不真面目なツッパリ不良のくせに、子分を率いて張り切っているのだ。
去年、レフトールはラムリーザ率いるクラスと対戦し、策略を巡らせて彼を無力化することで、勝利を収めていた。
さて、今年はどうなるだろうか。
最初は、一騎ずつ戦う個人対抗戦。
これはラムリーザたちの陣営も互角に近い戦いを見せたが、結果は僅差での敗北だった。
個人対抗戦では、ラムリーザ、リゲル、レフトールがそれぞれ一勝を挙げたものの、序盤の負けが最後まで響いた。ジャンも勢いだけはあったが、勢いだけでどうにかなる競技でもない。
「コラーッ、てめーらっ! 何負けまくっているんだよ!」
お山の大将を気取るレフトールの怒声が飛ぶ。もっとも、ここでいう「お山の大将」はレフトール個人を指す呼び名であり、実際の大将は三年生のユグドラシルということになっている。
この個人対抗戦では戦力を考慮せず、各学年の騎馬が学年順に戦うことになっていた。
レフトールは大将のように張り切っているが、実際には全体の中ほどに位置しており、自分が勝っても、その後に戦う三年生の戦績次第では、陣営全体の勝利にはつながらない。
各クラスからは四隊ずつ出場し、ラムリーザのいる二年生のクラスからはレフトールとラムリーザ、あとはリゲルとジャンが騎手となっていた。
学年の中では自由に順番を決めることができ、先陣にジャン、二番手にリゲル、三番手にラムリーザ。そして二年生の大将を、レフトールが務めていた。
リゲルはレフトールに、「主人を先に出すとはな」と軽口を叩いた。だがラムリーザ自身が、こういう競技は慣れている者が大将を務めたほうがよいと言い、レフトールに任せたのである。
ちなみに総当たり戦では、ラムリーザの出番が来るまでに一年生の四隊がすべて負けており、二年生の先陣を切ったジャンもあっさりとやられてしまっていた。
肝心なところで勝ちきれないのが、いかにもジャンらしいとはいえ、ラムリーザとリゲル、そしてレフトールが勝ったものの、二年生までを終えた時点で三勝五敗。続く三年生も二勝二敗に終わり、結局負けてしまったのだ。
「コラ一年! 次の勝ち抜き戦でも負けまくったら承知しねーからな!」
レフトールの怒声は、クラスメイトや下級生たち、そして一部の上級生を萎縮させるだけだ。勝ち抜き戦の先鋒戦では、こちらの一年生の先鋒が、相手の素早い攻撃に翻弄され、激戦の末に敗れていた。
「くそがっ! 次だ、次鋒、出ろ!」
「次鋒、レオナルド行きます!」
二人目となる一年生の騎馬は、勢いよく相手へ突進したが、その途中で馬役の一人が足をもつれさせて転倒してしまった。その結果、騎馬が総崩れとなってしまったため、その場で敗北となった。
「何やってんだ貴様ーっ!」
いきなり二人抜きを食らって、レフトールは怒り心頭だ。
「馬ーっ、なにやってんだよー」
「すまんっ、焦って失敗した!」
といっても、ラムリーザの属する側の一年生はそれほど強くなさそうだ。このままでは、相手の先鋒に四人抜きされる可能性もあった。それでも三番手の一年生は、相手の先鋒と何とか互角に戦っていた。
「へへっ、中堅ともなると今までの奴とは歯ごたえが違うぜ」
しかし相手の先鋒には余裕があるようだった。試合中に、余裕の笑みを浮かべて挑発している。
結局三番手の生徒も、ハチマキは守ったものの、騎馬が枠外へ押し出されたため、敗北となった。
「アホたれがーっ!」
レフトールがまたしても怒声を張り上げると、ラムリーザがレフトールのほうを向いて人差し指を唇に当てて黙るように促す。そうされると、レフトールは「むむむ……」と唸ることしかできない。まるで、主人に「吠えるな」と命じられた番犬のように。
続いて四番手、一年生では最後の騎手が出場することとなった。
「せめて刺し違えて、引き分けにでも持ち込めや!」
いったんはラムリーザに制されたものの、すぐに騒ぎ出すレフトールであった。
そして相手の先鋒とこちらの四番手の勝負は、意外な形で終わった。激しくもみ合っている最中、騎手が両者とも馬から転落。珍しい形だが、引き分けということになった。
「よし、それでいい。自爆してでも体当たりで一騎ずつ潰していけばいい」
はあはあと肩で息をする四番手の一年生を見て、レフトールはよくやったと言わんばかりに満足そうだったが、リゲルに「それだと、こっちはすでに三人抜かれている分、最終的に負けるぞ」などと突っ込まれている。
「よし、ここから逆転だ」
こちら側は一年生の騎馬隊がすべてやられたので、二年生の先鋒であるジャンが登場することとなった。
「総当たり戦で負けているくせに何言ってんだコラ!」
だがレフトールは、不利な展開にピリピリしている。確かに総当たり戦では、二年生部門で唯一の負けがジャンだ。
「ジャンはなぁ、勝ったあとの態度が……」
ラムリーザは、ジャンが負けた理由を知っていた。今回も勝ってハッスルしすぎれば、同じ負け方をするだろう。
「さあ来い、えっとそっちの次鋒は誰だ?」
「フェリックスです」
「ジャンだ。行くぜフェリックス!」
ジャンは、相手側の二番手として登場した次鋒フェリックスに突っ込んでいった。そして素早く、相手のハチマキを奪い取ってしまった。
「よっしゃーっ!」
そしてそのまま、奪ったハチマキを天高く放り投げた。
「あ、またやった」
ラムリーザのつぶやきに、レフトールは「あ?」と答える。
次の瞬間、審判をしていた教師が警告の笛を鳴らす。
「こらこらっ! 取ったハチマキを投げ捨ててはいかんと、さっきも言っただろう!」
「なっ?!」
「反則負け!」
「ぬぬっ?!」
結果、ジャンは勝利後の行為を咎められ、反則負けとなった。奪ったハチマキを粗末に扱う行為は、騎士道精神に反する――という趣旨の規則らしい。
「何やってんだコラ!」
「はっはっはっはっ!」
「はっはじゃねぇ!」
「かっこいいところ見せないと、リリスがガッカリするぞ」
ジャンとレフトールが言い合っているところに、ラムリーザは、ぼそりとつぶやいた。
「あ……」
それを聞いて固まるジャン。慌てて観客席にいるリリスを探すが、リリスは騒いでいるソニアと違って、黙って見ているだけだった。
そんなわけで、相手側はまだ一年生の二番手なのに、こちら側はもう二年生の二番手リゲルの登場となった。差し引きでは四騎分の負け。かなりの劣勢だった。
「リゲル、策はあるん?」
ラムリーザは自分の参謀役のリゲルに尋ねた。困ったときに尋ねれば、たいてい何らかの解決策を示してくれる。
「こんなお遊びに、策も何もあるか」
しかしリゲルは何も考えていなかった。確かに策を考えてやるようなことではない。レフトールが一人で騒いでいるだけだ。
こうしてリゲルの戦いが始まった。しかし、その戦いもあっさりとしたものとなったのである。
相手の一年生の二番手は、試合開始と同時にほとんど捨て身の体当たりを仕掛けた。双方の騎馬がもつれ合い、崩れてしまう。
「両者引き分け!」
リゲルは相手の自爆攻撃に巻き込まれて、智謀を生かす間もなく退場してしまった。智謀を生かすと言っても、この場合参謀長が最前線に出ている時点で夢も智謀もないというものだ。
「よし、それでいいぞ」
そう言ったのは、相手の二年生大将だ。ラムリーザには、その人物に見覚えがあった。
「てめーベイオ、やりやがったな」
レフトールは憤っている。そうだ、ベイオだ。以前軽音楽部の部室にやってきた、プロレス同好会を立ち上げたベイオだ。
ベイオの狙いは、このまま一騎ずつ相討ちに持ち込み、自分が無傷のまま、こちらの三年生大将ユグドラシルと対峙することだった。消耗せずに敵の大将と戦える作戦だった。レフトールが口にした「刺し違えてでも引き分けに持ち込め」という策を、本気で実践しているのだ。
そんなわけで、いよいよ二年生の副将ラムリーザが登場する。
「ラムさん! この嫌な流れを断ち切ってくれ!」
レフトールはラムリーザに懇願する。
「相手は、こっちの騎馬を崩しにくるんだよね。その突進を止めて、騎手を落としても勝ちだよね?」
「まぁそうなる。だから奴ら、共倒れを狙ってきているんだ」
「それならば、一人ずつ強引に落としていくか」
そしてラムリーザと、相手側の一年生三番手との戦いが始まった。
「ラムさん、中堅ともなるといままでのやつらとは歯ごたえが違うらしいから気をつけてな」
レフトールはラムリーザにアドバイスを飛ばす。しかし今までのと言っても、ラムリーザにとっては、これが勝ち抜き戦での初戦だ。これまでの相手と比較しようもない。
中央の円の中に入って、お互い礼をする。ちなみに、この円から馬役が出てしまっても負けだ。
「始めっ!」
審判の教師の掛け声で、相手側の馬が突進してくる。明らかに自爆狙いだ。
ラムリーザは、突き出しに来た騎手の両手首をつかんだ。その瞬間、相手は苦悶の表情を浮かべた。
「痛い痛い、いたたたっ」
ラムリーザは相手の手首をしっかり押さえたまま、すぐに次の動きに移す。すべてを素早くこなさなければ、馬役が相手に押しつぶされてしまうだろう。相手の両手首をまとめ、左手一本でつかんで動きを封じた。片手だけで相手の両腕を封じる、ラムリーザの凄まじい握力。すぐさまラムリーザは、空いた右手で、相手の馬役の先頭を務める生徒の顔面をつかんだ。鉄の爪、アイアンクローである。
「なっ?」
これで相手の馬役の動きは止まり、こちらの騎馬が押し崩される危険もなくなった。あとは騎手を落とすか、ハチマキを奪うだけ――だが、ラムリーザの動きも止まっている。騎手の両手首を左手でつかみ、右手で馬役の先頭の顔をつかんでいる。これでは動けない。だが――
相手の両手首をつかんだ左腕を、強引に手前へ引いた。すると相手はバランスを崩してラムリーザのほうへとつんのめってしまった。そこで馬役の先頭をつかんでいた右手を外して、素早く騎手の腰へ腕を回し、上手投げの要領で馬上から投げ落とした。哀れ、相手の騎手は、そのまま馬役から転落してしまったのである。
「転落! 勝負あり!」
騎馬戦というより格闘技のようだったが、自爆狙いの相手を止めるには、この方法が手っ取り早かった。ハチマキを奪ってもよかったのだが、リゲルの仇討ちをするつもりはなく、相手を地面に落としてやった。
「おいおい、俺たちの獲物も残しておいてくれよ」
レフトールは、久々の勝利に余裕ぶってみせる。まだ三人分負けているというのに偉そうだ。
「ちっ、次出ろ。そいつを倒せば一気に逆転も可能だ!」
相手の二年生大将、プロレス同好会のベイオも突然の強敵出現に慌てている。まだ三人分勝っているというのに、ただ一つの豪快な勝利を許しただけで熱くなって混乱しているようだ。
そして次は、一年生の大将とラムリーザが勝負することになった。
試合が始まり、一年生の大将は自爆狙いではなく正面から、正攻法でラムリーザに挑んだ。そして二人が中央でがっちりとつかみ合い――
「いっ、痛い!」
またしても相手の騎手は、ラムリーザにつかまれて悲鳴を上げてしまう。相手は、つかまれた両手を引き抜こうとするが、ラムリーザはがっちりつかんだまま離さない。そして今度は、両手を引き寄せる。その動きに合わせて、相手は無防備な頭をラムリーザの前にさらけ出すこととなった。バランスを崩した相手からハチマキを奪うのは難しくなかった。
「勝負あり!」
「よっしゃ! あと二人抜きで並ぶぞ!」
「自爆で良いからあいつを止めろ!」
レフトールとベイオの掛け声が飛んでいる。騒いでいるのは主にその二人だけ。三年生たちは、正面の相手を見据えたまま、静かに出番を待っている。さすが年長者だけあって、落ち着いていた。
ベイオやレフトールたちは、まだガキであった。
「彼に捕まったらヤバいっすよ、化け物じみた握力だ……」
やられた最後の一年生は、二年生の先鋒にアドバイスしている。
「捕まらなければどうということはない」
二年生先鋒は、何か策があるようだ。
そして、ラムリーザの三戦目が始まった。
「えっ?」
試合開始の合図と同時に相手が取った行動に、ラムリーザは思わず驚きの声を上げる。なんと相手は、両手を後ろに隠してしまった。
「ふっふっふっ、これであんた得意の握力も、相手をつかめなければ生かせない。どうだ! ラムリーザの握力封じ作戦――あっ」
ラムリーザは、両手を後ろに隠して無防備になった相手のハチマキを、難なく奪ってしまった。
硬直している相手の二年生先鋒。
「勝負あり! 無気力試合は警告ものだぞ!」
審判の教師が怒っている。
「ちっ、違うっ! これはあいつにつかまれない作戦で――」
「下がれっ」
「くっ――」
作戦はまったく意味をなさず、がっくりと肩を落として先鋒は引き下がっていった。
「馬鹿めっ」
そしてベイオに怒られていた。
とにかくこれで、ラムリーザは三人抜き。続いて四人目と対峙するが、それでもこちら側は一人分負けている。本当に今年の一年生は不甲斐ない。
しかし二人目の騎手も、ラムリーザにつかまれまいと両手をかばい、動きがぎこちなくなった。その隙にラムリーザは相手のハチマキを奪うことに成功したのであった。
「よいよい」
先ほどまで騒いでいたレフトールは、余裕を取り戻して得意顔をしている。
「番犬が主人の活躍で安心しているじゃないか。本来なら逆であるべきだろう」
「よいのだ。主君が一騎打ちで勝利することで、士気は大いに高まる」
「それもあり得るか」
「一騎打ちの正攻法で、ラムさんの力を封じることは不可能だ。だから俺は、去年は複数で襲いかかって討ち取ってやった」
「なるほど。それならこの一対一の勝ち抜き戦だともう終わったようなものだな」
「ふっふっふっ、ラムさんを運よく仕留められたとしても、その後に控えているのは百戦錬磨のレフトール様だ」
レフトールとリゲルが何か言い合っている間に、いよいよ二年生の副将同士の戦いとなった。
しかしどうやら、今回の相手もラムリーザの敵ではなかったようだ。ラリアットの相打ち――ではなく、ラムリーザがいきなり相手の顔面を鷲掴みにして、相手がびっくりしたところをサッとハチマキを奪ってしまった。
これでラムリーザは五人抜き。相手側の残り五騎に対して、こちらは六騎。とうとう逆転してしまった。
「ふっふっふっ、プロレスマニアのベイオさんよ、ここまでだな。てめーもラムさんにやられてこいや」
「なんの! プロレス同好会の発展のため、ここで、たとえラムリーザ相手でも、力負けするわけにはいかないのだ!」
そう言って、相手側二年生大将のベイオが前へと進み出た。
ベイオは、騎馬の上でも妙に腰が据わっていた。腕を広げる構えも、相手をつかまえるというより、組み合う間合いを測っているように見える。
プロレス同好会を名乗るだけあって、ただの体育祭の騎馬戦にも、どこか試合めいた雰囲気を持ち込んでいた。
そしてラムリーザ対ベイオの一騎打ちが始まった。
「始め!」
審判をしている教師の合図で、両者ぶつかり合う。
ベイオは、つかまれれば終わりだと理解していた。だが、逃げ回るだけでは勝負にならない。そこで、攻めながらラムリーザにつかませない戦法を選んだ。
「んん?」
ラムリーザは、これまでの相手とは違い、ベイオが果敢に腕を伸ばしてきたのを見て一瞬身構えた。そこをベイオは見逃さなかった。ベイオは両手で、ラムリーザの両手首をつかんだ。これならばラムリーザの凶悪な握力に悩まされることはない。
しかし、そのまま両者の動きは止まってしまった。
ベイオは手を離せない。手を離せばラムリーザの暴力的な力が襲いかかってくる。しかし手を離さねばハチマキは奪えない。
「くっ、おいギャレッタ、押し出してしまえ」
騎手同士の力比べでは決着がつかないと判断したのか、ベイオは馬役の先頭に指示を飛ばす。
「そうはさせないぞ」
ラムリーザは、相手の馬役を止めようと腕を伸ばした。ベイオに手首をつかまれているにもかかわらず、その腕は止まらない。相手の先頭役、ギャレッタの顔面を、そのままつかんでしまった。
「ば、馬鹿な!」
ベイオは、ラムリーザの圧倒的な力に驚く。
「あ、そっか。こうしてしまったら良いんだ」
手首をつかまれたままでも腕を動かせると気づいたラムリーザは、馬役の顔面から手を離すと、そのままベイオのハチマキに手を伸ばした。
「そうはさせるか!」
ベイオはラムリーザの力を抑え込むのは不可能だと早々に諦め、ラムリーザの手首を放し、素早く相手のハチマキに腕を伸ばした。
そして――
「同体! 引き分け!」
二人は同時に相手のハチマキを奪っていた。
ラムリーザは六人抜きを逃して残念がり、ベイオはラムリーザの力の凄まじさを改めて思い知らされていた。
「うまい芝居だったぞ」
自分の陣営に戻ったラムリーザに、レフトールは労いの言葉をかける。それが労いになっているかは、よく分からなかったが。
「いや、別に芝居してないよ」
「よし、あとは俺に任せておけ」
レフトールは相手の動きを巧みに誘い、馬役の足並みを乱して次々とハチマキを奪った。三年生の四隊を一気に抜き去り、勝ち抜き戦はそこで決着した。大口を叩くだけのことはあり、その実力は本物だった。
ラムリーザのような理不尽な力ではない。だが、騎馬戦という競技に限れば、レフトールは明らかに慣れていた。相手の動きを誘い、馬役の足並みを乱し、隙を見てハチマキを奪う。
ラムリーザがひっくり返した流れを、レフトールが最後まで渡さなかった。普段は口ばかりに見える番長も、この競技だけは本当に強かった。
今年は使える駒がそろっている――と、レフトールは満足そうだった。
こうして勝ち抜き戦は、ラムリーザたちの陣営の勝利で終わった。個人対抗戦と勝ち抜き戦を終え、これで一勝一敗。
ラムリーザの握力は、今年の騎馬戦でも十分すぎるほど通用した。だが最後に待っているのは、一対一ではない乱戦である。
勝負は、最後の乱戦にもつれ込んだのであった。